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ヤバイな…と思った時はもう約束の時間を1時間以上も過ぎていた。
蘭世から誘われたのはこの月曜日のこと。観覧車の夜間営業のことは知るともなしに知っていた。江藤が好きそうだな…と思ったがなかなか時間が取れずこのままになるかと思っていた矢先だったから、グループでと言う話にも乗ることにしたのだった。はっきり言ってかなり苦手な状況だったが、蘭世をがっかりさせたくなかったのだ。
それがどうだ。
放課後から来ていたジムでちょっとしたアクシデントがあり、気がついたときにはすでに時計は8時を過ぎていたのだ。
大急ぎでジムを出る。待ち合わせの場所まで走って20分くらい。荷物を肩に俊は週末の街を走る。
信号を渡ると、待ち合わせの喫茶店が見える。閉店10分前。客はおそらくぐっと減っている時間。その店の窓際に、蘭世の顔が見えた。ぼんやりと外を見ている彼女はまだ俊の存在に気づいていない。
彼女の傍に今日一緒に行動するはずだった“友達”の姿はない。当然だろう。そろそろ約束の時間を2時間は過ぎるはずだ。いくら気のいい少女たちでも、そんなに長い時間来るかどうかわからない俊を待つわけにはいかなかったのだろう。
カララン。
ドアをあけると、乾いたカウベルの音。「そろそろ閉店ですよ」と告げようとしたマスターは、窓際でずっと外を見ていた少女の顔がほころぶのを見て、口を開くのをやめた。
「真壁君…」
「わりい、遅れた」
「ううん、来てくれてありがとう」
そう言って笑った蘭世だが、目元にちょっぴり涙が浮かんでいるのを俊は見逃さなかった。心を読むまでもなく、俊を待つ間の蘭世の気持ちは痛いほど感じられた。だから。
ポン。
俊は蘭世の頭を軽く叩く。そして、
「観覧車だろ、まだ間に合うかも知れねえぞ」
と言った。
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