闇の中 |
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ふ…と目が覚めた。
今はまだ夜。
闇の中、隣の部屋の常夜灯の光が、戸の隙間からうっすらと滲んでいた。
となりには母が。そしてその向こうには“彼女”が眠っていた。 |
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気がついたら、彼女は自分の傍にいた。
自分の感覚では1年ほど前夕焼けを一緒に見たお姉ちゃんだったその人は、母と共にいつも傍にいてくれた。
いつも優しく傍にいてくれたその人は、いつしか俊にとって母と同じかそれ以上に親しみをもてる相手となっており、その人が自分の姉で無いと知ったとき、とても失望したのである。いつか、彼女が傍を離れていくのではないか…と思って。
「――――真壁君が好きだったの」
昼間聞いた、彼女の言葉がよみがえる。
「もちろん、今もよ」
その表情が、今まで知っていた彼女のそれとは全く違って見えて、彼女の言う“真壁君”が過去の、そして未来の自分であることが嬉しくて。
だから俊は、次の瞬間問われた彼女の難題に精一杯真剣に答えようとしたのだった。 |
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どうしてだろう。
俊は思う。
昼間のあの時を、彼女の言葉を思い出すだけで、どうして自分はこんなにドキドキするのだろう。
「お姉ちゃん…」
俊は呼びかける。もちろん返事は期待しないままで。
「お姉ちゃん………蘭世?」
“その頃”自分は彼女をどう呼んだのだろう。そんな疑問に答えが出るわけもなく。
このもやもやした気持ちが何か説明のつかないまま、俊はもう一度枕に頭を落とし…眠りについた。 |
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本当に久々の『ときめき』です。本気で、もう書けないのではないか…と思っていたのですが、やっと少しずつお話が見えてきました。
どうしてお話が書けなかったのか・・・自分でもわかりません。ただ、はっきり形が出来上がった2人が和紗には見えなくなってきていたように思えるのです。
『ときめき』って、蘭世が俊に恋するだけではなくて、俊が蘭世に恋していくお話でもあるのかなって最近思えるようになって来ました。そうしたら、ちっちゃい俊君が出てきて…こんな形になりました。
多分、本気で『ときめき』の世界に向き合うのはもう少し時間がかかると思います。
でも、いつかはきっと帰って来たいと思っている、そんな大切な世界だと改めて感じました。 |
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